自分はAGA?他の脱毛症との違いと、受診前に確認できること

抜け毛が増えたとき、まず知りたいのは「治療法」ではなく「これは何なのか」だと思います。

原因がAGAなのか別のものなのかで、やるべきことがまったく変わります。この記事では、AGAとは何が起きている状態なのか、そしてAGA以外の可能性として何があるのかを整理します。

AGAとは何が起きている状態か

日本皮膚科学会の診療ガイドラインは、男性型脱毛症(AGA)を次のように定義しています。

毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる毛包が多くなることを病態の基盤とし、臨床的には前頭部や頭頂部の頭髪が、軟毛化して細く短くなり、最終的には頭髪が皮表に現れなくなる現象

ポイントは3つです。

  1. 成長期が短くなる(毛が十分に育つ前に抜ける)
  2. 軟毛化する(残っている毛が細く短くなる)
  3. 前頭部・頭頂部に起きる

そして最も重要な特徴が、パターン化した脱毛であることです。ガイドラインは、休止期脱毛との違いとしてこの点を挙げています。全体が均一に薄くなるのではなく、生え際と頭頂部という決まった場所から進むのがAGAです。

何歳で、どれくらいの人に起きるのか

ガイドラインには具体的な数字が示されています。

年代 発症率
20代 約10%
30代 20%
40代 30%
50代以降 40数%

全年齢平均で約30%。進行の時期についても、日本人男性では20歳代後半から30歳代にかけて著明となり、徐々に進行して40歳代以後に完成されるとされています。

つまり20代で気になり始めるのは早すぎるということではなく、10人に1人はすでに始まっている時期にあたります。

発症には遺伝と男性ホルモンが関与するとされ、遺伝的背景としてはX染色体上の男性ホルモンレセプター遺伝子の多型などが知られています。

なぜ髭は濃くなるのに、頭は薄くなるのか

ここはあまり知られていませんが、AGAの仕組みを理解するうえで最も重要な部分です。

男性ホルモンは一般に、骨や筋肉の発達を促し、髭や胸毛を濃くする方向に働きます。ところが前頭部や頭頂部では逆に軟毛化を引き起こす。同じホルモンが、部位によって真逆に働くのです。

仕組みはこうです。

  1. テストステロンが毛乳頭細胞に運ばれる
  2. II型5α-還元酵素の働きで、より活性の高いDHT(ジヒドロテストステロン)に変換される
  3. DHTが男性ホルモン受容体に結合する

ここから先が部位によって分かれます。

部位 DHT結合後に起きること 結果
細胞成長因子などを誘導 成長期が延長する
前頭部・頭頂部 TGF-βやDKK1などを誘導し、毛母細胞の増殖を抑制 成長期が短縮する

「髭が濃い人はハゲやすい」という言い方をされることがありますが、正確には同じDHTが場所によって逆方向に働いているということです。

AGA治療薬のフィナステリドやデュタステリドは、この5α-還元酵素の働きを抑えることで、DHTへの変換を減らす薬です。

AGAではない可能性

ここが、この記事で最も伝えたい部分です。

診療ガイドラインは、男性型脱毛症の診断について「比較的容易である」としつつ、次のように述べています。

ゆっくりと頭髪が抜け、頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型(中略)などを除外することが大切である

除外すべきものとして挙げられているもの:

  • 円形脱毛症の亜型 — ゆっくり抜け、頭部全体が疎になるタイプ。円形にはならないため気づきにくい
  • 慢性休止期脱毛
  • 全身性疾患に伴う脱毛 — 膠原病、慢性甲状腺炎など
  • 貧血
  • 急激なダイエット、その他の消耗性疾患に伴う脱毛
  • 薬剤による脱毛

つまり、抜け毛の背景に治療が必要な別の病気が隠れている可能性があります。

AGAだと思い込んで自己判断で治療を始めると、本来必要な検査や治療が遅れることになります。特に、急に抜け始めた、全体が均一に薄くなっている、頭皮に炎症やかゆみがある、といった場合は、パターン化した脱毛というAGAの特徴から外れます。

まず皮膚科で診断を受けてください。 AGAかどうかの判断は、そこからです。

医師はどう診断するのか

ガイドラインが示す診断の流れは次のとおりです。

  1. 問診 — 家族歴、脱毛の経過を聴く
  2. 視診 — 額の生え際が後退し、前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認
  3. 拡大鏡・ダーモスコピー — 診断の手助けとして使用

特別な検査というより、経過の聞き取りと目視が中心です。だからこそ、いつから、どのように変化したかを説明できると診察がスムーズになります。

進行度の分類

AGAの進行度には分類法があります。

  • 日本では緒方の分類
  • 欧米ではNorwoodの分類
  • 現在の日本では、Norwoodの分類に高島分類の頭頂部が薄くなる「II vertex」を加えた分類が広く使用されている

クリニックで「あなたはこの段階です」と説明される際、多くはこの分類に基づいています。

なお女性の場合は、男性と異なり頭頂部の比較的広い範囲が薄くなるパターンで観察され、更年期に多発します。病態が男性ホルモン依存性では説明できない場合もあるため、現在は「女性型脱毛症」という病名が国際的に使われるようになっています。

受診前に整理しておくとよいこと

診察は問診が中心なので、次を整理しておくと役に立ちます。

  • いつ頃から気になり始めたか
  • どこから薄くなってきたか(生え際/頭頂部/全体)
  • 進行のスピード(徐々に/急に)
  • 家族に同じ傾向の人がいるか
  • 服用中の薬があるか
  • 急激な体重減少や体調の変化がなかったか

あわせて、同じ場所・同じ照明・同じ角度で撮った写真があると、変化を客観的に説明できます。

まとめ

  • AGAは成長期が短くなり、前頭部・頭頂部が軟毛化する状態
  • 特徴はパターン化した脱毛。全体が均一に薄くなるのとは異なる
  • 発症率は20代約10%、30代20%、40代30%、50代以降40数%
  • 同じDHTが、髭では成長期を延ばし、頭頂部では縮める
  • 円形脱毛症の亜型、全身性疾患、貧血、薬剤性など、AGA以外の可能性を除外することが大切
  • 診断は問診・視診・ダーモスコピーが中心。まず皮膚科で診てもらう

自己判断で治療を始める前に、それがAGAなのかを確認してください。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。医学的な診断・治療の代わりになるものではなく、セルフチェックによって診断を確定できるものでもありません。抜け毛について気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいています。

参考

  • 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」(日本皮膚科学会雑誌 127巻13号 2763-2777)

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