AGA治療薬の種類と副作用|診療ガイドラインの推奨度から整理する

AGA・薄毛

AGA治療で使われる薬は、実はそれほど種類が多くありません。そして、日本皮膚科学会が診療ガイドラインで推奨度を明示しています

クリニックの比較サイトではあまり触れられませんが、この推奨度を知っておくと「なぜこの薬が処方されるのか」「なぜこの治療は勧められないのか」が自分で判断できるようになります。

診療ガイドラインという判断基準がある

日本皮膚科学会は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」を公表しており、各治療法にA〜Dの推奨度をつけています。

推奨度 意味
A 行うよう強く勧める
B 行うよう勧める
C1 行ってもよい
C2 行わないほうがよい
D 行うべきではない

治療法を検討するときは、まずこの推奨度を確認するのが合理的です。

現行の最新版は2017年版です(2010年版を改訂したもの)。原典は日本皮膚科学会の公式サイトで公開されています。

男性のAGAで推奨度Aとされている治療

男性のAGAに対して、推奨度Aとされているのは主に次の3つです。

フィナステリド内服

AGAの進行に関わる男性ホルモンの働きを抑える内服薬です。日本では2005年に承認され、AGA治療の基本的な選択肢とされています。ジェネリック医薬品も流通しています。

デュタステリド内服

フィナステリドと似た作用機序を持つ内服薬です。日本では2015年にAGA治療薬として承認されました。

ミノキシジル外用

頭皮に直接塗るタイプの薬です。市販の発毛剤としても入手できます。内服薬とは作用の仕組みが異なるため、併用が行われることもあります。

ガイドラインは、男性型脱毛症には5%ミノキシジル(女性型脱毛症には1%)の外用を強く勧めています。

その他の治療法の推奨度

薬剤以外についても、ガイドラインは推奨度を示しています。

治療法 推奨度(男性型脱毛症)
自毛植毛術 B(行うよう勧める)
LED・低出力レーザー照射 B(行うよう勧める)
アデノシン外用 B(行うよう勧める)
カルプロニウム塩化物外用 C1(行ってもよい)
かつらの着用 C1(行ってもよい)
成長因子導入・細胞移植療法 C2(行わないほうがよい)
人工毛植毛術 D(行うべきではない)
ミノキシジル内服 D(行うべきではない)

注意すべき点:ミノキシジルの「内服」

ここが最も重要な情報です。

ミノキシジルの内服(飲むタイプ)は、日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度D「行うべきではない」とされています。

ガイドラインの記載を要約すると、次のとおりです。

  • ミノキシジル内服の有用性に関して、臨床試験は実施されていない
  • ミノキシジルは降圧剤として開発されたが、日本では認可されていない
  • 男性型脱毛症に対する治療薬として認可されている国はない
  • 全身の多毛症を起こす副作用があることを根拠に処方・個人輸入されることがあり、医薬品医療機器等法の観点から問題視されている
  • 内服用製剤の添付文書には、胸痛、心拍数増加、動悸、息切れ、呼吸困難、うっ血性心不全、むくみや体重増加といった重大な心血管系障害が生じるとの記載がある

ガイドラインは、利益と危険性が十分に検証されていないため、男性型・女性型脱毛症ともに行わないよう強く勧めています

一方で、一部の医療機関では自由診療の枠組みでミノキシジル内服を処方しているケースがあります。処方を受ける場合は、それが国内未承認の使用であること、どのようなリスクがあるのかを、必ず医師に確認してください。

未承認薬による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。この点も含めて説明を受けるべきです。

主な副作用

内服薬(フィナステリド・デュタステリド)

報告されている副作用として、次のようなものがあります。

  • 性欲減退
  • 勃起機能の低下
  • 射精障害
  • 肝機能障害
  • 抑うつ症状

いずれも頻度は高くないとされていますが、ゼロではありません。異変を感じたら自己判断で続けず、処方を受けた医師に相談してください。

肝機能への影響があるため、治療前後の血液検査を行うクリニックがあります。 検査を実施しない方針のところもあるので、自分がどちらを望むかは考えておいたほうがよいでしょう。

外用薬(ミノキシジル)

  • 頭皮のかゆみ、かぶれ、発疹
  • 使用開始初期の一時的な抜け毛の増加(いわゆる初期脱毛)

服用する前に知っておくべき3つの注意点

1. 女性への投与は禁忌

フィナステリド・デュタステリドは、女性への投与が禁忌とされています。

ガイドラインには、妊婦に投与するとDHTの低下により男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあり、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性への投与は禁忌である、と明記されています。

また各製剤の添付文書では、女性や小児は、割れたり砕けたりした錠剤に触れないこととされています。家庭内での保管方法には注意してください。

なお未成年については、ガイドラインは「国内の臨床試験は20歳以上の男性を対象に行われたので、わが国では20歳未満に対する安全性は確立していない」としています。「使用が禁止されている」というより「安全性が確認されていない」という位置づけです。

2. 服用中は献血ができない

フィナステリド・デュタステリドを服用している間は、献血ができません。服用を中止した後も、日本赤十字社の基準により以下の期間は献血できません。

薬剤 献血できない期間
フィナステリド(プロペシア、プロスカー等) 服薬中止後1ヶ月
デュタステリド(ザガーロ、アボルブ等) 服薬中止後6ヶ月

デュタステリドの期間が長いのは、体内から成分が排出されるまでに時間がかかるためです。輸血を受ける人の中に妊娠の可能性がある女性が含まれうることが、この制限の背景にあります。

定期的に献血をしている人は、あらかじめ知っておくべき情報です。

3. 前立腺がん検査(PSA値)に影響する

フィナステリドはPSA値を低下させることが知られています。PSA値は前立腺がんのスクリーニング検査に使われる指標です。

ガイドラインによれば、フィナステリド(1mg/日)を用いた48週間のランダム化比較試験で、血清PSA濃度が約50%低下することが示されました。そのため、フィナステリドまたはデュタステリドを服用中に前立腺癌診断の目的でPSA濃度を測定する場合は、測定値を2倍した値を目安として評価すべきとされています。

服用中にPSA検査を受ける場合は、AGA治療薬を服用していることを必ず検査担当医に伝えてください。伝えないと、実際より低い値として評価されてしまう可能性があります。

まとめ

  • 男性のAGAで推奨度Aとされているのは、フィナステリド内服・デュタステリド内服・ミノキシジル外用の3つ
  • ミノキシジルの内服は推奨度D「行うべきではない」。臨床試験が実施されておらず、脱毛症治療薬として認可している国もない。処方される場合は、未承認であることとリスクの説明を必ず受けること
  • 人工毛植毛術も推奨度D
  • 内服薬には性機能や肝機能に関する副作用の可能性がある
  • 女性への投与は禁忌。20歳未満は安全性が確立していない。女性・小児は割れた錠剤に触れない
  • 服用中は献血ができない(フィナステリドは中止後1ヶ月、デュタステリドは中止後6ヶ月)
  • PSA検査を受ける際は服用中であることを申告する(測定値の2倍で評価される)

治療薬の選択と服用の可否は、必ず医師の診察と説明のうえで判断してください。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や医療機関、医薬品を推奨するものではありません。医学的な診断・治療の代わりになるものではなく、効果を保証するものでもありません。服用の判断は必ず医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、最新の添付文書およびガイドラインをご確認ください。

参考

  • 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」(日本皮膚科学会雑誌 127巻13号 2763-2777)
  • 日本赤十字社「服薬と献血について」
  • 各医薬品の添付文書

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